私はアボカドアレルギーだ。
アレルギーと言っても、そう診断されたわけじゃない。アボカドを食べるたびに吐き気がするので、自分で勝手にアレルギーだと決めつけた。
結婚式の案内状にも、返信ハガキの「アレルギー欄」には、堂々と「アボカドアレルギー」と書いている。
アボカドは好きだけど、食べられないから辛い。
大学の友達がカカオアレルギーだったので、チョコレートが食べられないことに比べたら……と考えるようにしている。(どれだけ、支えられていることか!)
話は変わるが、私の実家は二世帯住宅で、1階に祖母が住み、2階に私たち家族が住んでいる。(私はもう家を出たけど)
1階と2階は内階段で繋がっていて、おばあちゃんと一緒にご飯を食べたり、テレビを観たりする。
母はご飯を多く作ると、「持って行って~」と言うので、私は料理を持って1階に降りていく。おばあちゃんはだいたいカセットテープで演歌を聴きながら、クイックルワイパーで床を掃除している。私に気づくと、ボリュームを下げることもあれば、逆に上げて歌を披露してくれることもあった。
料理を運ぶのは、私だけじゃない。
妹が持っていくこともある。
4つ違いの妹がまだ小学生だった時、「持って行って~」の声がかかった。私は自分の部屋で『ピチレモン』を読んでいて、この頃はよく聞こえないふりをしていた。
妹の返事が聞こえ、足音が聞こえ、階段を降りる音が聞こえた。
一段、また一段と、おりていく。
と、突然ガシャーン!と大きな音が。少し時間が経って、泣き声と駆け寄る足音がした。
階段を覗き込むと、妹が倒れ、いちごが散らばっている。
いちごを持っていく途中で、階段から落ちたらしい。
妹の泣き声と、爆音で流れる天童よしみのカセットテープ。
せめて、どちらか止めてほしい。
その日から、妹はいちごが嫌いになり、食べなくなった。
いちごも不本意だろう。
飛ばされた挙句、もう食べてもらえないとは……
私は食べられなくても、アボカドの美味しさを分かっているのに。
いちごの気持ちも考えてほしいものである。