着物の先生の親戚に、女の子が生まれた。名前は、華代(はなよ)ちゃん。名付け親は、華代ちゃんのおじいちゃんだそう。
華代ちゃんの両親は、子どもが生まれたらおじいちゃんに名前をつけてもらおうと決めていた。
「おじいちゃん、孫の名前考えてね」と何度も言ったのに、なかなか案が送られてこない。そこで直接家まで訪ねて行くと、机の上に「花代」という紙が置かれていた。
「なんだ、おじいちゃん。考えてくれていたんじゃない」
そうして字は「花」から「華」に変えたものの、おじいちゃんの案通り、「はなよちゃん」 を採用した。
しかし、この机に置かれた紙、実は名前の案ではなく、おばあちゃんのお墓詣りに持っていくお花の代金を忘れぬようおじいちゃんが書いた「花代(はなだい)」というメモだったのだ。
まあ、良いじゃない。おばあちゃんへの愛がたっぷりつまった、素敵な名前になったのだ。
名前は最初に貰うギフトだ。一生、一緒に生きていく。
私の名前は、ひらがなで「みさき」という。
両親が岬(みさき)へ行ったとき、海が広くてきれいだったから、そんな広くてきれいな心を持った子になるようにと名付けたらしい。
両親のデートの思い出だなんて恥ずかしいけれど、結構気に入っている。
そういえば、小学生の時に飼っていた亀に、「カメロンディアス」と「ベッカメ」という名前をつけたけど、彼らは気に入っていたのだろうか。
気に入っていたと信じたい。