今日のこと。

ほとんど今日のことではありません。

誰も理解してくれない女子高生の悩み

高校3年生の夏、雲仙(長崎県)で勉強合宿があった。

会場は旅館。勉強する環境が整っていないので、普段使っている机と椅子をトラックに積み込んで持って行かなければいけない。当日はブルーシートも持参し、部屋の畳に敷いて、その上に机と椅子を置く。

 

旅館の部屋が勉強部屋に早変わりするのだ。
5〜6人で1部屋を割り振られ、ひたすら壁に向かって勉強する。

 

朝起きて、周辺を散歩し(散歩と呼べないほどの短い距離)、朝ごはんを食べて、勉強し、昼ごはんを食べて、勉強し、昼寝して、勉強し、夜ご飯を食べて、勉強し、風呂に入って、勉強し、そして眠りにつく。

これをひたすら繰り返す。何泊だったか、覚えていない。

 

3日目あたりから、「あら、だんだん太ってきたよね?」と気づき始める。


女子はだいたい便秘になった。


食事は学年全員が1つの大きな会場に集まり、一斉に食べる。その時「おかわりハンター」と呼ばれるおばちゃんたちが、茶碗が空になるとどこからともなく現れて、ご飯をよそってくれるのだ。このおかわりハンターの視野が広いのなんの。獲物を狙うかのように待ち構えているので、私たちが太る要因の1つに違いなかった。

 

雲仙は長崎の有名な温泉街で、道路のあちこちから湯気が出ている。街全体に硫黄の匂いがたちこめる。日本一長い足湯もある。

 

お風呂の時間は、合宿中の唯一の癒しだった。

 

宿の温泉の効能欄には「便秘」と書いてあり、それを見た同じ部屋の子は温泉を飲んでいた。多分、効能の意味がわかっていなかったんだと思う。

 

温泉は、いろいろと難しい。

話はそれるが、大学の新歓合宿で伊王島に行ったとき、浴場に入るやいなや、目の前のかけ湯に浸かろうとしてしまった。掛け湯に右足をかけたところで、その日初めて会った友人に全力で止められ、事なきをえた。感謝感謝である。


話を戻そう。


私たちは便秘で、温泉を飲んだ友人も結局は治らなかった。

 

お腹が痛かったので、「便秘だから勉強に集中できない。これだと、合宿の意味がない」という想いの丈を日誌に綴ったところ、翌日担任の先生(男性)が部屋へやってきて、「お前ら!ブリッジが良いんだ!ブッリジをやれ!」と言うので、仕方なくブルーシートを少しよけ、畳でブリッジをやってみた。

 

いくらやっても効果はなく、私たちは太り続けるし、便秘も治らないし、勉強も捗らない。ただただブリッジが上手になっただけだ。

 


最終日。私たちは、古典の先生に向けて手紙を書いた。「まるで私たちは養豚場にいるようです」と書いた。ただの手紙だと受け取ってもらえないので、漢文で書いた。

 

古文の手紙

 

先生は手紙を読み終えると、「ここの置き字が違う」と言って、赤字を入れて返してくれた。

 

そうじゃない……

 

私たちの苦しみは、誰も理解してくれなかった。