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『映画を撮りながら考えたこと』を読んで考えたこと

今更ながら、是枝裕和監督の『映画を撮りながら考えたこと』を読んだ。

 

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最近、この本を企画・取材・執筆したブックライターの堀香織さんとある縁で知り合った。堀さんからこの本の制作にまつわるストーリーをいろいろと伺い、早速Book Expressでお取り寄せ。本もおもしろいし、制作過程もおもしろい!

 

とにかく良かったので、オススメポイントを紹介します。

 

8年間の集大成というべき 「厚み」

この本は、完成までに8年かかっているらしい。

別のブックライターが、今はサラッと読める本の方が売れるので、「1時間で読める本」を書くようにしていると言っていた。

 

けれど、この本は1時間では読みきれない。

それは、414ページという厚みのせいだけではなく、読み始めるといろいろと考えてしまうため、ページをめくる手が止まってしまうのだ。

 

普段何気なく見ているニュースも、別の角度からみると見解は変わる。

まわりの意見に流されず、自分の意見をしっかりもつことができているだろうか……

 

是枝監督は「映画が考えるきっかけになってほしい」と言っていたが、この本がまさに考えるきっかけになる本だと思う。


映画制作の裏側っておもしろい!

本の構成は映画ごとに分かれており、是枝監督の最初の作品である『幻の光』(1995)から出版当時の最新作『海よりもまだ深く』(2016)までが時系列に並んでいる。

 

私はそれほど映画に詳しくない。映画制作に深い関心があるわけでもない。

でも、映画制作の裏側を知るのはおもしろい!

 

どのように撮影は進んでいくのか、どのような工夫がされているのか、どのように俳優を選ぶのか。ものをつくるという共通点があるので、クリエイティブな仕事をしている人にとっては最高におもしろいはずだ。

 

同じ会社で働くデザイナーにこの本を紹介したところ、早速読んで「おもしろい!」と言ってくれた。(オススメした本をおもしろいって言ってもらうの、嬉しいー!)。そして、「初期の作品から全部観たくなったね」と。

 

映画は実際に観ることができる。だから、映画と本を行ったり来たりして、双方を深めていくと更におもしろいかも。是枝監督作品は『そして、父になる』しか観たことがないので(!)、TSUTAYAに行かないと。すでに作品を観たことがある方も、この本を読んでから改めて観ると、映画のおもしろさが増すこと間違いなし。

 

あと、映画の収益はどのように配分されるのかとか、どのようにプロモーションするのかについても書かれている。クリエイティブな面だけでなく、経営的な面からも映画について書かれているのでおもしろい。お金の話は、やっぱり気になるし。


新しい気づきが、とにかく多い

この本は、学べる本だ。それは、新しい気づきやアイディアが多いからだと思う。

 

たとえば、「パブリック」と「パーソナル」。


映画の題材は、実際に起こった事件やニュースが基になっていることが多い。しかし、そのパブリックな話題を映画に落とし込む際にキーとなるのは、「被害者の家族との出会い」や「父親の死」といったパーソナルな出来事とのこと。

パブリックはパーソナルに落とし込んでいる一方で、パーソナルな体験や心情は、パブリックな視点に置き換えるようにしているらしい。

 

 

また、「イマージュ」と「オマージュ」という言葉もおもしろい。

写真家・荒木経惟氏の「今の写真に欠けているのはオマージュだ」という言葉に対して、是枝監督は次のように述べている。

 

写真で大事なのは、作家の想像──イマージュではなく、被写体への愛──オマージュだと。それが映るのが写真であると。僕はこの意見に心から賛成します。(省略)ですから、イマジネーションが自分の内部に涸渇して撮れなくなるという心配は、実はまったくしていません。

 

作品をつくる人は、なんで次々と新しいものを生み出せるのだろうと思っていたけれど、ストンと腑に落ちた。かっこよすぎる~。


「これこそ読書!」という追体験

「読書ほどコストパフォーマンスが良い学びはない」という言葉を聞いたことがある。私はこの本を読んで、まったくその通りだと思った。

 

『映画を撮りながら考えたこと』は、お値段2,400円。本のなかでは、ちょっとお高め。けれど、この本を読むことで、是枝監督の苦悩や迷い、喜びを追体験できる。2,400円で追体験できるなんて安いですよ。本当に。

 

そういえば、中学3年生のときにクラスの男子が「読書は追体験できるから好き」と言っていて、かっこいいなと思ったことを思い出した。あれから12年経ってようやく私も同じことが言える。

 

追体験こそ読書の醍醐味だと思う。

 

 

『映画を撮りながら考えたこと』は、映画『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高のパルム・ドールを受賞してから再び注目を集め、重版を繰り返しているそう。しかもすでに韓国と台湾で出版されており、噂によれば、近く中国やフランスでも出版されるとか。

 

映画『万引き家族』は、これまた今更ながら近所の映画館で観てきました。この本を読んでいたので、なおさら楽しめた気がする!

 

 

www.kyonokoto.site

 

 

こんな素敵な本を世に送り出すなんて、ブックライターとはなんて素敵な仕事なんだ!

 

この本は借りるのも良いけど、本棚に置いておいた方がいいと思います。「2,400円はちょっと……」というなら貸しますので言ってください。ただ、読んだら欲しくなると思います。

 

 

 

映画を撮りながら考えたこと

映画を撮りながら考えたこと