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『映画を撮りながら考えたこと』を読んで考えたこと

今更ながら、是枝裕和監督の『映画を撮りながら考えたこと』を読んだ。

 

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最近、この本を企画・取材・執筆したブックライターの堀香織さんとある縁で知り合ったのだが、堀さんが「原稿を書いたあと、一度(お風呂で)音読することをオススメします」と話したとき、私はビビビッときて、以来勝手に弟子入りした。「その堀さんのオススメならば!」とBook Expressで取り寄せたのだ。

 

というのも、もう閉じちゃったtwitterのアカウントで、私は次のようにをつぶやいている。

 

雑誌はよく読みますが、特にSWITCHが好き。今月は宇多田ヒカルさんが取り上げられています。毎号ぎっしりインタビュー記事が載っていて、深く掘り下げていて、文字びっしりな感じが好きです。お風呂に持って入って、音読しています。リズムが好き、なのかな?

 

堀さん、なんと元SWITCHの編集者……SWITCHめっちゃ好きだったし、今も好き。うぅ、嬉しすぎる。

 

という話はおいといて、『映画を撮りながら考えたこと』がすごく良くてどうしようもないので、何が良いのかを紹介させてください!

 

 


8年間の集大成というべき 「厚み」

この本は、完成までに8年かかっているらしい。別のブックライターが「1時間で読める本を書くようにしている」と言っていて、今はサラッと読める本の方が売れるのか(?)書店に並んでいる本を見ても、すぐに読み終えてしまうものが多いように思う。

 

けれど、この本は1時間じゃ読みきれない。そもそも、414ページという分厚さであるうえに、読んでいると思考がはたらき始める。読みながら、いちいち考えてしまう。

 

普段何気なく見ているニュースも、別の角度から見れば見解は180度変わってしまうのかもしれない。まわりに流されているんじゃないだろうか。自分の考えを持っているだろうかと、考えずにはいられない。そのたびにページをめくる手は止まってしまうので、なおさら時間が必要なのだ。

 

「止まってしまう」というのは、「読みにくい」とは違う。文はすごく読みやすい。まるで是枝監督に話しかけられているみたい。だから、「厚い」とか「つい止まってしまう」とか言ったけど、文章自体はスイスイ読める。

 

是枝監督は「映画が考えるきっかけになってほしい」と言っていたが、この本もまさに考えるきっかけになる本だと思う。


映画制作の裏側っておもしろい!

本の構成は映画ごとに分かれており、是枝監督の最初の作品である『幻の光』(1995)から出版当時の最新作『海よりもまだ深く』(2016)までが時系列に並んでいる。

 

私はそれほど映画に詳しくない。映画制作に関心があるわけでもない。でも、映画制作の裏側を知るのはおもしろい。

どのように撮影は進んでいくのか、どのような工夫がされているのか、どのように俳優を選ぶのか。ものをつくるという共通点があるので、クリエイティブな仕事をしている人にとっては最高におもしろいはずだ。

 

同じ会社で働くデザイナーに紹介したら「おもしろい!」と言ってくれた。(オススメした本をおもしろいって言ってもらうの、嬉しいー!)。そして、「初期の作品から全部観たくなったね」と。

 

映画は実際に観ることができる。だから、映画と本を行ったり来たりして、双方を深めていくことだってできる。是枝監督作品は『そして、父になる』しか観たことがないので(!)、早速TSUTAYAに行かないと。すでに作品を観たことがある方も、この本を読んでから改めて観ると、映画のおもしろさが増すこと間違いなし。

 

あと、映画の収益はどのように配分されるのかとか、どのようにプロモーションするのかについても書かれているので、クリエイティブな面だけでなく経営的な面からも映画について知れるのが良い。お金の話は、やっぱり気になるし。


新しい気づきがとにかく多い

最初に書いた通り、文章自体は読みやすいものの、とにかく考えさせられる。なぜなら、新しい「ものの考え方」「概念」が次々に出てくるからだ。

 

たとえば、「パブリック」と「パーソナル」。
映画の題材は、実際に起こった事件やニュースが基になっていることが多い。しかし、そのパブリックな話題を映画に落とし込む際にキーとなるのは、被害者の家族との出会いや父親の死といったパーソナルな出来事だったりする。パーソナルな体験や心情はパブリックな視点に置き換えるようにしていると言う一方で、やはりパーソナルな部分が細部に表れているらしい。パブリックとパーソナル。その両方の視点を行ったり来たりしながらつくるという章は、学びの多い章だった。

 

また、「イマージュ」と「オマージュ」という言葉もおもしろい。写真家・荒木経惟氏の「今の写真に欠けているのはオマージュだ」という言葉に対して、是枝監督はこのように述べている。

 

写真で大事なのは、作家の想像──イマージュではなく、被写体への愛──オマージュだと。それが映るのが写真であると。僕はこの意見に心から賛成します。(省略)ですから、イマジネーションが自分の内部に涸渇して撮れなくなるという心配は、実はまったくしていません。

 

作品をつくる人は、なんで次々と新しいものを生み出せるのだろうと思っていたけれど、ストンと腑に落ちた。かっこよすぎる~。


「これこそ読書!」という追体験

本を読むことについて、「これほどコストパフォーマンスが良い学びはない」と言っている人がいた。私はこの本を読んで、まったくその通りだと思った。

 

414ページという厚さに加え、お値段は2,400円(税抜)とお高め。けれど、読み終わって感じたのは、2,400円は全然高く感じないということ。むしろ、もう1冊買って誰かにプレゼントしたいなと思うくらい。

 

この本を読むことで、是枝監督の苦悩や迷い、喜びを追体験できる。読書を通した追体験を、私は初めて実感を伴って体験した。

 

中学3年生のときに、クラスの男子が「読書は追体験できるから好き」って言っていてかっこいいなーと思ったけど、あれから12年経ってようやく私も同じことが言えるようになった。追体験こそ読書の醍醐味だと思うし、是枝監督の経験を追体験させてもらえるなんて、2,400円の価値は十分ある。

 

 

映画を撮りながら考えたこと』は、映画『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高のパルム・ドールを受賞してから再び注目を集め、重版を繰り返しているそう。しかもすでに韓国と台湾で出版され、噂によれば近く中国でも、来年はフランスでも出版されるとか。

 

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4月の自分に伝えたい。

 

大泉洋さんのページはびしょびしょになったけど、その雑誌がステキな出会いを運んでくれるから落ち込むなと。

 

うーん。こんな素敵な本を世に送り出すなんて、これまたなんて素敵な仕事なんだ!

 

この本は借りるのも良いけど、本棚に置いておいた方がいいと思います。「2,400円はちょっと……」というなら貸しますので言ってください。ただ、読んだら欲しくなると思います。

 

 

 

映画を撮りながら考えたこと

映画を撮りながら考えたこと