大学の卒業旅行は、ヨーロッパ周遊だった。私は5週間におよぶこの旅行のため、アルバイトとインターンを全部で3つ掛け持ちしていた。
韓国経由でイスタンブールに飛び、トルコを周遊。
トルコからイタリアへ飛び、ミラノで友人の家に一泊。
その後、当時付き合っていた彼(今の夫)とミラノで合流し、イタリア(ミラノ・ヴェローナ・ベネチア)、フランス(ニース・パリ)を観光。
パリで別れて、私はイギリスへ。
イギリスから日本へ帰国。というスケジュール。
トルコまでは最高だった。
裁判所に連れて行かれ、そこで出会った敏腕弁護士の子どもを迎えになぜか保育園に連れて行かれ、即興で日本語講座の講師をさせられたりもしたけど、どれも素晴らしい経験だった。
ミラノでは、カナダで仲良しだった友人に会えて、「美術館で待ち合わせましょう」と言われた。今までで1番オシャレな待ち合わせだ。
ミラノで彼と合流してからは、急に緊張が解けたのか、いろいろトラブルやハプニングがあった。
まず、『ロミオとジュリエット』の聖地・ヴェローナで、ジュリエットの像がまさかの修復中だった。ジュリエットの像は、映画『ジュリエットからの手紙』に出てくる手紙が埋め込まれた壁の近くにあって、胸を触ると願いが叶うと言われている。
私も触ってやろうと意気込んでいたのだが、そこにあったのは20センチくらいのおもちゃの像だった。
(逆にレア?)
そして、ベネチアではバッグを丸ごと取られてしまった。バッグの中には、私のiPhoneと彼の財布・パスポートが入っていて、結構大変だった。現金も入っていたので、盗った人は大喜びだったと思う。
私の財布とパスポートは腹巻の中に入れていたので、なんとか旅を続けることはできたのだが、その日からスーパーのパンをかじる旅を余儀なくされた。
私は相変わらずノーテンキだったけど、彼はというと、パスポートをミラノで再発行し、クレジットカードを停止し、盗難届を発行してもらい……と奔走し、疲れ気味。
その日、彼は私に向かって静かに一言、「現実を見てほしい」と言った。これが、おそらくは今のところ最初で最後の喧嘩らしいやりとりである。
そういえば、この後さらにもう1つ事件が発生。
ニースからモナコまでの大きな道路で路頭に迷い、ヒッチハイクせざるをえない状況になったのだ。2人で初めての共同作業といえば、ケーキ入刀じゃなくてこの日親指をあげたことだと思っている。また怒られると思ったけど、この日の夜は「肝が据わっている」と褒めてくれた。
ちなみに、私たちは新婚旅行でもイタリアとフランスを再訪している。
新婚旅行は終始和やかに進み、「なんだかつまらなかったね」と帰国。
最後に全てがひっくり返るような大事件が起こるのではと身構えていたが、結局何も起こらなかった。(トレヴィの泉で、大学のお友達に遭遇事件はあったか!)
何も起きないということが、1番の幸せ。
めでたし、めでたし。
これからも、できるだけ現実を見ていこうと思う。