今日のこと。

ほとんど今日のことではありません。

スティーブ・ジョブズの教え

大学の卒業論文には、概要をまとめたA4の要旨をつけなければいけない。

 

私は提出期限が迫ってもなかなか書けなかったので、それを見かねた先生が「伊藤さんに書いてもらいなさい」と言った。伊藤くんにお願いすると、「このテーマにしようと思ったきっかけは?」とかなんとか、いくつか質問され、それに答えるとササッと仕上げてくれた。たいしたものだ、とひどく感動したのを覚えている。

 

そうして、私たちは結婚した。というと急展開すぎるのだが、とにかく私はその伊藤くんと結婚することになった。

 

結婚式は諏訪神社。披露宴はホテルニュー長崎。披露宴のコースメニューは、あらかじめ両家で試食した。ただし、その試食会に肝心の新郎は不参加。たしか、出張だったはず。

 

私の母は、夫のことを気に入っている。(1番気に入っているのは、おばあちゃんだけど)母曰く、私たち3姉妹にない「知的さ」をもっているらしい。多分、遠藤周作の『沈黙』を読んでいたからだろう。

 

母は試食会でも『沈黙』の話を持ち出した。するとお義父さんは驚いたように、「いやいや、息子は本なんか読みませんよ」と言う。そして、こう続けた。

 

 

「読んでいない本の読書感想文を書いて、入賞したことはありますけど」

 

 

一同、大笑い。

 

 

しかし、そのとき私はハッとした。スティーブ・ジョブズが言うとおり、点と点が線で結ばれた瞬間だった。

 

読んでいない私の卒論の要約を、いとも簡単にまとめた彼。そのスキルは、読書感想文で入賞した学生の頃からすでに培われていたのだ。

 

神妙な顔で頷く私。

 

 

 

笑っている場合じゃない。それで私は、結婚したのだから。