今日のこと。

ほとんど今日のことではありません。

マニュアル主義について

大学生のとき、デパ地下のお惣菜屋さんでアルバイトをしていた。店長がめちゃめちゃ怖い人で、キレると皿を投げ出す。子連れのお客さんに向かって「黙れ、クソガキ」と言って、クレームがきたこともあるらしい。「クソガキ」は言っちゃダメ、絶対。

 

そのお惣菜屋さんは、完璧なマニュアル主義だった。お客さんが来店してから去っていくまでの一言一句が決められている。

 

私がそのアルバイトを始めたのは、大学1年生の冬。 

採用されてすぐ、福岡まで研修を受けに行った。決まったセリフを覚え、ロールプレイができるようになって晴れて店舗に立てるのだ。

 

研修はなかなか厳しくて、「ありがとうございました。またお越しくださいませ」と言うと、「『ありがとうございました。またどうぞお越しくださいませ』と言ってください」と指導されたのでびっくり。一生懸命、セリフを覚えた。

 

ところが、ようやく店舗に立った初日。例の「クソガキ事件」が勃発。クソガキなんて、マニュアルはもとより、常識として絶対に言ってはいけない。しかも、それを店長が言う。

 

気をとり直してロールプレイ通りの接客をしようと試みるも、お客さんが急に「やるけん」と言って、みかんを差し出してくる。

 

注文を受けたサラダを容器に入れようとすると、「これに入れて」とビニール袋を差し出してくる。

 

一緒にシフトに入ったスタッフは、「まさに、エビの観覧車!」という謎のセールストークで海老カツを売っている。(エビの……観覧車?)

 

店長も、お客さんも、スタッフも、誰一人としてロールプレイで想定していた行動をとっていない。研修で指導してくださったお姉さんの顔が浮かび、パッと消えた。

 

お辞儀や敬語についてとても詳しく教えてもらったから、あの研修にはとても感謝しているけど、店舗では役にたたないことも多かった。

 

いつもみかんをくれたおばあちゃん、元気かな。

 

店長も、元気だと良いな。