今日のこと。

ほとんど今日のことではありません。

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』を読んだ感想

また面白い本を読んだ。

 

タイトルは少し長くて、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』。この本を書いた花田菜々子さんは、他の著書にも『出会い系サイトで出会いをあきらめて5年間日記だけを書き続けたらまさかのモテモテになったので晒します 出会い系サイトで5年間日記』という長いタイトルをつけている。長い!

 

この本は、ヴィレッジ・ヴァンガードで店長として働いていた菜々子さんが、出会い系サイト「X」を使って70人に会い、その人に合う本をオススメしていくという、タイトル通りの話なのだが、自身の夫婦関係や仕事に関する悩みが並行して書かれてあり、「X」で出会う人たちやそこでの経験を通して、その悩みとどう向き合うかというストーリーも面白い。

 

特に、第6章で憧れの山下さんと会い、自分にとって幸せとは何かを頭と心と体で悟るシーンは、こちらまでブルッと震えた。

 

本のすすめ方についても、最初は相手の興味のあるフィールドど真ん中を狙っていくが、試行錯誤を重ねて、「あなたが素敵」+「この本素敵」=「素敵なあなただから素敵なこの本がおすすめです」作戦へと辿り着く。この過程も面白いし、この作戦はいろんなことにもあてはまるので、どこかで参考にしよう。

 

本の最後にオススメの本が一覧にしてあり、その中にミランダ・ジュライの『あなたを選んでくれるもの』があった(以前紹介してもらって読んだことがある)。この本は、フリーペーパーの「不用品売ります」コーナーに出品している人を訪ねてインタビューしていくという内容で、出会い系サイトにしろフリーペーパーにしろ、「自分はこういうことをやっているのでお話聞かせてもらえませんか」という武器をもっていると、出会いが広がりやすいのだなと思った。

 

菜々子さんは出会い系サイトで見ず知らずの人に本をすすめることを「武者修行」と呼んでいたが、本当に「修行」という気持ちがなければ、こんなに次々と新しい人に会えないだろう。

 

菜々子さんはその後、この経験をもとに大手書店に採用される。アイディアと行動力、そこで培った経験とスキルというのは、確かに魅力的だと思った。

 

結局、面白い人は、面白いことを思いついて、実行する人のことなのだろう。私はなれない。

 

 

憧れの山下さんと話した日の夜、嬉しさを噛み締め、宿でひとり興奮を噛み締めるシーンより引用。グッとくる。

クロスワードパズルのたったひとつの解答が連鎖的にすべての解答を導き出すときのように、このささやかな夜は私の魂を決定づけた。

解けたからわかる。私が突き付けられているような気がしていた普遍的な議題──たとえば「独身と結婚しているのとどちらがいいのか?」「仕事と家庭のどちらを優先すべきか?」「子どもを持つべきか持たないべきか?」──そもそもの問いが私の人生の重要な議題とずれていたのだ。こんな問いに立ち向かわされているとき、いつも自分の輪郭は消えそうで、きちんと答えられなくて不甲斐ない気分になることは、自分がいけないのだと思っていた。でも今夜、この今、自分の輪郭は電気が流れそうなほどにくっきりとしてびかびかと発光していた。

もう普通の幸せはいらない。恋愛も結婚もいらない。お金も安定もいらない。何もいらない。ただ今日見た光を信じて生きていこう。

自分の求める幸せが何なのかはっきりわかった。そんな夜だった。