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京都・上京区に、楽焼を展示した楽美術館がある。

 

「一楽 二萩 三唐津」(一富士 二鷹 三茄子みたいな感じで)と言われるように、楽焼は桃山時代から450年も続く歴史ある焼き物だ。

 

 

ちなみに私は楽美術館のインスタグラムをフォローしているが、楽茶碗が真上・真横・真下とあらゆる角度から撮られた写真がずらりと並ぶマニアックな投稿になっていて、なかなか面白い。茶碗ばかりだけど、どれひとつ同じものがなく、本当に綺麗だと思う。時間があるときに、覗いてみてほしい。

 
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楽美術館では、茶碗が展示されているほか、焼かれる工程の紹介ビデオを見ることもできる。

 

 

このビデオによると、楽焼の材料となる土は100年前のものを使っているらしい。つまり、今使われている土は、当代の祖父や曽祖父が集めた土。茶碗をつくることと同様、100年後に使う土を探すというのも当代にとっては重要な仕事なのだ。

 

「当代」と書いたが、楽家は初代・長次郎から数え、現在15代目。代々当代は「吉左衛門」を名乗っている。これが、襲名すると戸籍ごと変えるというのでビックリ。歌舞伎役者のように本名は別というわけにはいかないらしい。

 

父は息子に名前を譲り、息子はそのまた息子に名前を譲る。

 

楽焼についての本の著者が「楽 吉左衛門」ばかりなので「えらい長生きされているな」と思っていたが、タネが明かされ納得した。

 

 

父が息子に譲るのは、名前だけではない。技も受け継いでいく。

 

茶碗の原型を形作ると、そこから薄く削っていく。楽焼はろくろを使わない手捏ね(てづくね)と呼ばれる製法で、原型からすると約7割が削り落とされてしまうそう。その様子はビデオでも紹介されていたが、まさに職人技で本当に格好良かった。

 

茶碗が素焼きされると、今度は釉薬(ゆうやく)がかけられる。

 

釉薬とは、茶碗の上からかける薬品のことで、表面をコーティングする役割もあるし、色がつくので装飾の役割も果たすらしい。茶碗への色つけとして35回くらい繰り返されるという、とても大切な工程だ。

 

 

釉薬は灰や土石類を水に溶いて作られるのだが、この大事な釉薬の調合法だけは父から子には伝承されない。つまり、息子は一から釉薬の調合を研究しなければいけない。父がどれほど優れた釉薬の調合を発見できたとしても、教えることはできないのだ。

 

何度も釉薬を重ねると、最後に1,200度の釜で一気に焼いていく。焼いては冷まし、焼いては冷ましを20時間続けるらしい。寝ずに焼き続けるのだから、茶碗に命が吹き込まれるんだろうな。

 

 

長い歴史の中で15代にわたり続く楽焼。

それぞれの代に、それぞれの味わいや個性があるのは、遠い未来を見据えて「伝承しない」ことを選択した先人たちの英断によるのだろう。

 

そうすると、例のインスタグラムもたちまち神々しく見えてくる。

(実際、やっぱりちょっとシュール)