今日のこと。

ほとんど今日のことではありません。

超ローカルなトルコ旅行

今までツアー旅行に参加したことがあまりないのだけど、大学の卒業旅行でトルコへ行ったときには、友人が業者のように完璧なプランをたててくれた。往復のチケットだけ手配したら、あとはホテルも移動も観光も全てお任せ。

 

旅行は現地の友人に案内してもらうのがベストだ。

 

その土地を知り尽くす友人が立てるプランは、観光客目線ばかりでなく、地元の人目線でも楽しむことができる。

 

約5週間にわたる卒業旅行のスタートは、10日間のトルコ旅行からだった。

 

高校教師の友人は私のために10日間の休みをとり、トルコ周遊のプランをたて、全行程をガイドしてくれた。10日も休みがとれるなんて羨ましい。

 

友人はアイシェという。私より年上だけれど、小学生みたいに小柄な女性だ。

 

まるで修学旅行のしおりのような彼女が作成したプランには、4日目に謎の「court」という日が用意されていた。意味を理解しないままイスタンブールに到着し、やはり意味を理解しないまま4日目を迎えると、早速裁判所に連れていかれた。

 

アイシェの裁判だった。


私はザ・観光という旅行より、どちらかというと現地の暮らしを感じる旅行の方が好きだけど、観光の間に裁判を挟むというプランは聞いたことがない。


事情を聞くと、以前アイシェがアメリカへ旅行した際に巻き込まれたトラブルの裁判だという。女性敏腕弁護士がやってきて、挨拶するなり「Wish me luck !」と言い、アイシェを連れ去ってしまった。


私はロビーで弁護士の助手(キュートな女性)と二人きり。彼女は日本語を話せないし、私はトルコ語を話せない。今となっては不思議だが、なぜか2人は盛り上がることができた。

 

あっという間に1時間半くらい経ったと思う。

 

ドアが開き、弁護士とアイシェが出てきていい結果が出たのだと知らせてくれた。

めでたしめでたし……とはいかず、どこからともなく眉毛が繋がった少年が鳩を片手にやってきた。勝訴?のお祝いなのか、鳩を飛ばすセレモニーが始まったのだ。

正直に打ち明けると、私は鳥恐怖症だ。だから、どうしても鳩を掴むことができなかった。

 

眉毛が繋がった少年が、「ほら、飛ばしてごらん。これは君が飛ばす分の鳩だよ」と、つぶらな瞳で鳩を差し出してくる。

 

せっかく用意してくれたこともわかるし、彼の健気さもわかるのだけど、どうしても鳩を掴むことができない。右手を差し出すけれど、どうしても、どうしても掴むことができない。

 

すると、「え、この子、鳩が噛みつくとでも思っているのかな?」と思い始めたのか、敏腕弁護士が私を説き伏せようと、謎のトルコ語を繰り返す。

 

「タメ!タメ!」

 

彼女が何を言っているのか分からないので、アイシェの方を見ると、Google翻訳で日本語に訳してくれた。

 

「飼い慣らす」

 

弁護士はさっきからずっと、「この鳩は『飼いならす』の鳩だから大丈夫。怖くない」と言っていたらしい。

 

やがてトルコ人4人がGoogle翻訳のとおり、日本語で「ka i na ra su」と言い始めた。

 

「Don’t be scared. This bird is “Kai I Na Ra Su”!」の唱和。頭、パンク。

 

鳥も怖いし、複数のトルコ人が「飼いならす」を連呼しているのも怖すぎる。

 

よし、彼女たちがそこまで言うなら。

 

意を決して右手を差し出したところ、大きく後ろに転倒。尻もちをついた瞬間、鳩は勝手に飛び出してしまった。

 

 

 

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飛んでゆく鳩。その鳩を見つめる少年。

その少年の眉毛は、やはり繋がっていた。

 

※どう見ても少年に見えないと思いますけど、彼は学生です。