バス停からケーブルカー乗り場までは、徒歩15分。階段を300段以上登る。
364日を耐え抜いたおばさま方は、速攻で茶屋へと消えていった。私は調子がいいので、一段飛ばしでヒョイヒョイッと駆け上がる。ヒョイヒョイッ。
乗り場に着いたとき、ちょうど上りの便が出発してしまった。おかげで、20分後に出る次の便では最前列の席をゲット。5歳くらいの男の子と並んで座った。
下りの最終便は、17時半。
ここから1キロ先に見晴台があるというので行ってみる。
なんだか、懐かしいなー。
大学生のとき、半年間だけワンダーフォーゲル部だった日々を思い出した。このことは、またいつか書こう。
途中で滝が現れた。
涼しいー! 夏なのに、猛暑日なのに、涼しいー! 私は滝が大好きなので、ひとり旅の醍醐味と言わんばかりに、ここに居たいだけ居ようと思った。それで、結構本当にしっかりそこに居た。
よし、見晴台へ行こう。
思いのほか、登山道は険しかった。舗装されているだろうと思い、ロングワンピースにスニーカーで来ていたので、ちょっと大変。
すれ違う人は誰もいない。ん……? 人が少ないぞ。嫌な予感がした。腕時計を見て、血の気が引く。なんと、17:00。最終の下り便まで、あと30分しかないのだ。
滝で「マイナスイオンたっぷり」とかほざいていた自分を呪いたい。最終便に間に合わなければ、歩いて下山しなければいけない。見晴台は諦めよう。
ロングスカートの裾を握りしめ、全速力で例のなかなか険しい登山道を駆け下りた。駆け下りながら、「なんだか私、今天狗みたいだな」と思った。
ようやく、滝のあたりまで来たところで、再び腕時計に目をやると、時刻はなんと18:00。
はい終了。歩いて下山決定。
そこで気づく。
今は、12:30だと。
まさかの、長針と短針を見間違えていたと。
うぅ……なんて馬鹿な。
しかし、あの道のりを5分強で滝まで駆け下りてきたとは、我ながらあっぱれ。
のんびり滝を見上げる家族の後ろで、ゼーハー肩を上下させている私は、まだ最終便まで時間がたっぷりあると分かったけれど、もう元来た道を引き返す気にはなれなかった。
山を降りよう。
そして無事、19:00に下りのケーブルカー乗り場に着きました。