瀬戸内寂聴さんと秘書である瀬尾まなほさんの対談集を読みました。
この本の構成を担当されたのは、私が(ほぼ)専属でテープリライトをさせてもらっているライターの堀香織さんです。
テープリライトとは、インタビューを文字に起こしていくこと。これが、めちゃめちゃおもしろい。この本のテープリライトもやらせてもらいました。
ほぼ専属と言ったけど、私も堀さんのインタビューしかほとんどテープリライトはしていません。なので、堀さんが担当されている『Forbes JAPAN』やこういう本や別の媒体のインタビューなどを文字に起こしているわけだけど、そりゃあ面白いよな〜と改めて思う。
今回の対談もそれはそれはおもしろくて、瀬戸内寂聴さん御年98歳なんですね、びっくりしました。
たとえば、本の中にはこんな面白いやりとりがあります。
まなほさん:(子供に対して)どうしてもいろいろと言いたくなる。心配で「あれしちゃダメ、これしちゃダメ」と。本人を信じたほうがいいんですよね?
寂聴先生:そうそう。信用して、放っておいたほうがいい。
まなほさん:なんていう言葉をかけてあげたらいいんですか?
寂聴先生:「あなたがお母さんの子だから、そんなアホには産んでいないんだよ」と言えばいいのよ。
まなほさん:なるほど(笑)。じゃあ、何か悪いことをしたときは?
寂聴先生:「残念だけど、あなたにはお父さんの血も入っている」って。
これ、言いたいな〜(笑)。
その他にも、こんな部分が「いいな〜」と思いました。
寂聴先生:このごろ、「何を始めたところですぐに死ぬじゃないか」と思う。すると逆に「だからこそ、いま、やってみるか」と思うようになった。
まなほさん:私のように自分の好きなものがわからない、才能もあるのかわからないという人は本当にいっぱいいる。だけど、人との出会いで人生って大きく変わるということを伝えて行きたいですね。
寂聴先生:孤独はやっぱり怖いと思いますね。私なんかはそういうのに慣れていて好きだけど、普通の人はそれが一番怖いんじゃないかしら。でも、そういうときこそ、「人はひとりだ」ということを思い知った方がいいんです。
テープリライトをしているとき、あまりに寂聴先生がズバズバと回答されていたので、これはきっと本には載らないだろうなと思っていた部分も多かったのですが、意外にも、本にはしっかり載っていたので驚きました。
「これはテープリライトの特権だー!」と喜んでいたけど、本でもちゃんと楽しめます。
私が好きなのは、祈りが小さな石ころにも力を持たせるという章と、1番最後の章。
「死後の世界から連載すればベストセラーになるかもしれないから、今夜死んだことにして書こうよ!」という寂聴先生に、まなほさんが「死んだ死んだ詐欺だと怒られますよ!」というのが面白い。
お二人のユーモアたっぷりの掛け合いがコロナを吹っ飛ばすくらいおもしろく、時折出てくる寂聴先生の深く温かい言葉がコロナの不安をじわりと和らげてくれるような、そんな本でした。