今日のこと。

ほとんど今日のことではありません。

どうせなら捨ててくれー!

親切は、むずかしい。

パワハラやセクハラが「受け手の問題」と言われていたように、親切だって「受け手の問題」だと思う。

 

高校生のとき、クラスメイトの家でよく勉強した。そこはケーキ屋さんで、店舗が休みのときに場所を貸してくれるのだ。休憩時間にはケーキが出てくる。3人〜5人でよく集まった。

 

互いに教えながら勉強するときもあれば、15分のインターバルを挟みながら45分の3〜5セットで個別に勉強するときもあった(今思えば、ストイック!)。けれど、最終的には勉強せずに喋り出す。

 

一緒に勉強していた男子が言った。

 

「この前、漫画全部捨てられてさー」

 

以前から、「受験生なんだから勉強に集中しなさい」と母親から言われており、いい加減にしないと漫画を捨てると脅されていたらしい。彼の漫画はクローゼットの中に並べてあって、数本のエロ本がところどころに紛れていた。

 

ある日彼は「もう漫画は全部処分しました」と母親から唐突に宣告される。

 

急いでクローゼットを開けると、たしかに全て漫画本がなくなっていた。

 

「俺の漫画が……(涙)」

 

しかし、これは奪ってはなるまい……という母親の親切心か、エロ本だけは残っていたそう。

 

 

 

ベイクドチーズケーキを頬張りながら、彼は言う。

 

「どうせなら、全部捨ててくれれば良かったのにさー」

 

 

 

そんな彼は、弁護士になった。

司法試験に一発合格し、今は名古屋で働いている。

 

 

「何かあったら、いつでも力になるよ」

 

 

すごいかっこいいはずなのに……

私の中の彼はいつまで経っても「エロ本を捨ててもらえなかった少年」のままだ。