今日のこと。

ほとんど今日のことではありません。

占い師デビューした話

大学生のとき、占いにハマった。

信じるとか信じないとかじゃなく、いわば「0次会」のようなもので、飲み会前に「ちょっとひっかけていく」ような感覚だった。

 

長崎の商店街に、500円で手相を見てくれる占い師がいて、彼は自分のことを「幸せ師」と呼んでいたけど、なかなか当たると有名だった。

 

以前は呉服屋さんの前に机と椅子を出して営業していたが、噂が噂を呼び、毎回長蛇の列ができるようになってからは、近くに店舗を借りたらしい。大学生のときに3回くらい行ったことがある。

 

私はどの占いでも「将来お金に困ることはない」と言われるので、それだけは信じるようにしてて、あとはあまり覚えていない。友達とキャーキャー言うのが、楽しいだけだ。

 

占い師になったこともある。

 

大学4年生のとき、大学の学祭で手相占いをやろうということになった。原価がかからないのが良い。学祭前日、一緒に出店するゼミのメンバーの家に集まり、ひたすらクッキーを焼いた。そのクッキーには、「金運」「健康」「就活」などという文字をアイシングして、「開運クッキー」という怪しい名前で売り出した。1つ250円だっただろうか、ちょうど隣のテントのカレーライスと同じ金額だった。

 

学祭当日は、手相占いを1人500円で行った。どこから持ってきたのか、机や椅子、ソファーを並べ、なんとなくそれらしい店になった。

 

学祭の出店は2日間。

 

適当に図書館で占いの本を数冊借りて、カンニングしながら接客していた。一緒にやっていたゼミの仲間の1人が、なぜか占いをマスターしてしまい、「最近別れた?」と言えば実際お客さんは彼氏と別れたばかりだったし、「臓器が悪い?」と言えばその子は手術したばかりだった。

 

すると、「ここの占いはめちゃくちゃ当たる!」と評判になり、意外とお客さんが来たので驚いた。

 

私は上手に占うことはできなかったけど、小さいおじさんがやってきて人生相談をされたので、ひたすら話を聞いていた。小さなおじさんは、「付き合ってもすぐに振られるんだ」と言う。(女子大生相手にどんな話してんだ)聞けば、彼女の友達にも誕生日プレゼントをあげるらしい。

 

「彼女怒るんでしょ?」

「別れるとき、『優しすぎる』とか言われるんでしょ?」

「っていうか、おじさん優柔不断でしょ?」

「彼女の友達にプレゼントとか、それ絶対やめたほうがいいですよ」

「やめてって言われませんでした?」

「っていうか、『なんで?』ってなりませんでした?」

(怒涛のまくし立て攻撃)

 

するとおじさん、「すごい!当たってる!」と感動。私はこのとき、一度もおじさんの手相を見ていなかったが、満足して500円を払ってくれた。

 

その後開運クッキーをオススメしたところ、恋愛や健康と書かれたクッキーはすでに売り切れ、残っていたのは「就職」だけ。小さいおじさんは、長崎の有名企業ですでに働いていたにも関わらず、「じゃあ、これを」とさらに250円払って買ってくれたのだ。

 

 

 

その優しさがダメって言ったんだけどな……

 

 

いろんな気持ちが混ざる商売であった。