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映画『日日是好日』がおもしろい

映画『日日是好日』を観た。このブログでも何度か登場しているが、茶道の映画である。

 

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原作のエッセイは2002年に書籍化されている。

16年の時を経て映画化されたのは、この映画の監督をつとめた大森監督がお子さんと図書館に行った際「なんの本だろう?」とふと手に取ったことがきっかけらしい。

 

この話は、原作の著者である森下典子さんが藤沢に講演会でいらっしゃったときにお聞きした。講演会にはきれいな着物姿で現れ、想像どおりの穏やかな方だった。

 

この映画のなかに声に出して笑わずにいられないシーンが2つあったので、聞かれてもないけど紹介します。ネタバレどころじゃないくらい、ガンガン詳細書きます。

 

 

【笑ったシーン1】 建水の水バッシャーンのシーン

 

お点前にはいろいろな道具を使うが、その一つに「建水」がある。これはお茶碗をゆすいだお湯や水を捨てるための器のこと。

 

すべてのお点前が終わると、建水の中は使い終えたお湯や水でいっぱい。その建水を持って立ち上がり、お茶室から出ていかなければならない。しかし、長いお点前の間ずっと正座しているため、亭主は足が痺れて動けないことがよくある。これは、茶道の「あるある」だ。

 

建水を左手に持ち、立ち上がろうとするも動けず……しばらくお客様の前で痺れが取れるのを待つというのは、よく経験するのだが、映画では痺れた足で無理矢理立とうとしてしまい後転。思いきり建水の水を頭からかぶるというシーンがある。

 

こういう人を、私は一度も見たことがない。見たことがある人なんて、いるのだろうか。絶対に「あるある」ではない。

 

ただ、現実の世界ではなかなか起きないからこそ、映画で見ることができてよかった。建水の水をかぶると、あんなふうになるのか〜と。

 

このシーンは、人目もはばからず声に出して笑ってしまった。我慢できなかった。

 

 

【笑ったシーン2】 お茶会で席取り合戦のシーン

 

建水バッシャーンは「絶対ない」と断言したが、こちらは間違いなく「あるある」だ。

 

お寺などで開かれるお茶会は、いくつかの部屋で同時にお茶がふるまわれる。何時から何時までと決まっているので、次々に部屋をまわらないといけないのだが、来場者が多いので並ぶこと必至。ディズニーランドの様態だ。

 

各部屋には定員があって、定員に達すると次の席まで待たなければいけない。黙って待つ……そして、ようやく中に通されると、席取り合戦が始まる。

 

なぜ席取り合戦が始まるのかというと、2つの理由がある。

 

1つ目は、亭主のお点前やお道具を見たいから。

畳の一角で亭主はお茶を点てる。客は壁に沿うように部屋をぐるっと取り囲む。亭主の背中側や遠いところに座るとお点前の様子が一切見えないので、できれば近くに座りたい。

 

2つ目は、お正客を避けたいから。

お正客とはお客様の代表であり、亭主にもっとも近い位置に座る。1番にお菓子をいただくのも、お茶をいただくのもお正客。これだけ聞くと「いいじゃないか!」と思うかもしれないが、実際には客を代表して亭主と会話しなければいけない。

 

亭主に質問するのはお正客だけなので、できるだけいろいろなお話を聞きたいところ。そのためには、お道具や掛け軸、禅、季節の花などの深い知識必要だ。それに、お正客の席は上座なので、そもそも座るのが恐れ多い。

 

よって、扉が開いて招き入れられた瞬間、一目散にお正客以外の目当ての席めがけて走り出す。このシーンは、リアルで笑った。

 

 

ちなみに、著者の森下さんは樹木希林さんにやってごらんと言われ、後ろ姿で映画に出演されている。雨が強く降り全員が窓の外を見るシーンでお点前をされているショートヘアの方が、森下さんだ。後ろから見ても、講演会のイメージそのままにチャーミングな方。

 

そんな森下さんも、もしかしたらお茶会では席取り合戦に参戦しているのかもしれない。建水の水はかぶっていないと信じたい。

 

千利休の石碑

千利休の石碑だろうか……