大学生のとき、第二外国語として中国語の授業をとっていた。先生は50代後半くらいの優しい男性で、仲のいい友人3人といつも出席していた。
友人の1人は、下敷きにポケモンシールを集めていた。ポケモンパンにおまけで入っている、小さいシールだ。
あるとき、演習問題を解いていると、私たちの席の横を通りかかった先生が、ポケモンシールに目を留めた。
「あなた、これ知っているの?」と、目を輝かせている。
友人は「ポケモンです」と答えた。
「違う、これ」と、先生。指差した先には、タッツーがいた。
「これはタッツーです」と、友人。
先生は真面目な顔で、「いいえ、違います」と言う。
「これはポケモンのタッツーです」と、友人。間違いなく、タッツーなのだ。
しかし先生は首を振り、一向に認めない。
そして、一言。
「これは高価な漢方です」
友達は諦め、タッツーは漢方だと受け入れた。
約2年間受けた中国語の授業で学んだことは、「タツノオトシゴは高価な漢方」ということだけ。
漢字は分かるけど、中国語は話せない。
授業料がもったいない。